法科大学院の目的

法科大学院は、法曹の質を維持しながら、法曹人口拡大の要請に応えるための新しい法曹養成制度として導入されました。従来の法曹養成制度については、厳しい受験競争のため受験技術優先の傾向が顕著になってきたこと、大学における法学教育も実際にはプロフェッションとしての法曹を養成するという役割とは異なる機能を担ってきたこと、その結果学生の受験予備校への依存傾向が著しくなってきたことなどが指摘されてきました。

このような状況の中で、いわゆる司法制度改革の論議において、司法が21世紀の我が国社会で期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立するためには、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験および司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備することが不可欠であり、その中核をなすものとして、法曹養成に特化した教育を行うためのプロフェッショナル・スクールである法科大学院の構想が唱えられ、2004(平成16)年4月から法科大学院制度が発足しました。

法科大学院は、学校教育法上の大学院として位置づけられていますが、第155回臨時国会で成立した学校教育法の一部改正(平成14年法律118号)において大学院の目的に高度専門職業人の養成が含まれることが明記されたことにより、法曹の養成に特化した実践的な教育を行う専門職大学院として位置づけられることになりました。このように、法科大学院は、大学院の中でも、「高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的」(同法99条2項)とする「専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とする」(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律第2条第1項)ものをいいます。

この法科大学院の目的を達成するため、教育内容面では、法曹として備えるべき資質と能力を育成するために、少人数で密度の濃い授業を基本としつつ、憲法、民法および刑法を初めとする法理論教育に加え、弁護士など実務教員の指導の下に、法律相談、事件内容の予備的聴取り、解決案の検討等を具体的事例に即して学ぶ「クリニック」や、法律事務所などで研修を行う「エクスターンシップ」など実務教育の導入部分をも併せて実施するなど、理論と実務との架橋を強く意識した高度の専門性をもった教育が行われています。

法科大学院では、経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ者や、社会人等としての経験を積んだ者等を幅広く受け入れ、多様なバックグラウンドをもった法曹を送り出すことが重要だとされています。このため、法科大学院の入学者選抜では、入学者の3割以上を、非法学部出身者など学部段階で法律以外の専攻分野を修めた者や実務の経験を有する者などとするよう努めることとされています。その際、法科大学院は、3年以上在籍し、99単位以上修得することが修了要件とされています。ただし、法学の基礎を学んだ法学既修者は、1年以下・36単位以下を短縮することが可能です。修了者は、司法試験の受験資格および「法務博士(専門職)」の学位を取得します。

法科大学院制度の発足に伴い司法試験は、法科大学院の教育内容を踏まえた新たなものに切り替えられることになり、司法試験の受験資格を有する者は法科大学院修了者等に限られることになり、試験の方法、試験科目等も改正されました。なお、司法試験の合格者に対して行われる司法修習も、修習生の増加や法科大学院での教育内容に応じ、実務修習を中核として位置づけながら、内容を適切に工夫することとされています。